


あつ湯の温度は47度にあわせております。こちらでの入浴方法は大変ユニークで、私どもでは「かけ湯」と呼んでおります。その昔、温泉宿が庶民に開かれた頃のお話です。自炊湯治の長期滞在客は必ずと言って良いほど「湯あたり」を起こしておりました。朝晩温泉に入って、4日目程でたまった疲れが出てくる頃です。熱い温泉が出る浴槽がひとつしか無かった当時は、現在のようなバルブ調整などもできませんでした。浴槽に入る事なく、この源泉を上手に利用することはできないものかと考えた結果であったと思います。
湯船の淵に木枕を置きましたら、そこへ寝そべります。竹の筒でゆっくりと1回1回丁寧に胃や腸のあたりに掛けていきます。最初は熱く感じますが、徐々に幹部がじんわり温まってきます。その方のリズムによって調子を整えながら100杯続けていただくのが峩々の伝統です。しかしながらこの入浴方法は旅館側がご提案したのではなく、湯治客がこのような理由で自然発生的に始まった独特の入浴方法なのです。
温度調節がしやすくなった現代においても、この温泉文化をなくすこと無く継承していく考えです。私どもは湯治文化によって成り立っているという事を、このかけ湯を通してお客様ご自身が直接感じて頂きたいと思っております。長時間入浴出来る智恵から誕生した独特の入浴法です。